インフォメーション

社内RAGチャット(DB連携・権限管理あり)の自社開発費用は?AI見積もりの実案件データで解説

作成者: 武内 開作|Jul 24, 2026 1:44:59 AM

「ChatGPTのような社内AIチャットを作りたい」という相談が急増しています。しかし、実際に社内ナレッジ検索やRAGシステムを自社開発しようとすると、要件の複雑さによって費用レンジが大きく変わります。

本記事では、deeptierのAI見積もりサービスに寄せられた相談をもとに、「複数DB連携・部署権限管理あり」のエンタープライズ向けRAGチャットシステムのスクラッチ開発費用を公開します。費用が高くなる構造的な理由と、コストを抑えるための設計判断についても解説します。

※本記事はAI見積もりサービスに寄せられた事例の内容を一部改変して、解説記事として提供しているものです。

社内ナレッジを活用したRAGチャットの新規開発についての相談

今回の事例は、社内ナレッジの検索・活用を効率化したい企業からの相談です。実際の相談は以下のような自然文で入力されました。

社内のドキュメントやマニュアルが色々な場所に散在していて、必要な情報を探すのに時間がかかっています。ChatGPTのように自然文で質問すると、社内の資料から答えを返してくれるようなシステムを自社で開発したいです。
社内ドキュメントはWord・Excel・PDF・画像など様々な形式があり、部署によって見せていい情報と見せてはいけない情報があるので、そのあたりの権限管理も必要です。
また、既存の基幹DBにもある程度アクセスできるようにしたいと考えています。社内DBはSQL ServerのほかにOracle、Accessも使っています。LLMは当初はクラウドでいいですが、セキュリティの観点から将来的にはローカルにも切り替えられるようにしたいです。

この相談をもとにチャット形式でヒアリングを重ね、以下の要件が確定しました。

【確定した主な要件】※AI見積もりツールが機能単位に整理したもの

  • 対象ユーザー: 一般社員・役職者・管理者の3ロール

  • RAGチャット: 社内ドキュメントを検索して回答・参照元表示

  • ナレッジ登録: ファイルアップロード→テキスト抽出→ベクトルDB化(全ロール)

  • 対応形式: Office系(本文抽出+マクロ分離)、PDF(文字抽出)、画像(マルチモーダル抽出)

  • ナレッジ編集: 自分の登録分は全員可、全件は管理者のみ

  • 部署ごとの権限管理: 閲覧/登録/編集のスコープを部署単位で制御

  • チャット履歴: SQL Serverに保存・本人/管理者が閲覧・管理者は削除可

  • 定型クエリ機能: SQL Server / Oracle / Access DBを参照して定型検索を実行

  • LLMプロバイダ:OpenAI APIを基本、将来的に自社ローカルLLMへの切替も対応

  • 外部DB連携: 社内SQL Server・Oracle DB・Access DB

  • 技術スタック: AWS / Vite+React / NestJS+TypeScript

 

社内RAGチャットの開発費用(DB連携・権限管理あり)は4,947万〜6,596万円

総開発費用は税抜きで4,947万〜6,596万円、開発期間は9.3〜12.4ヶ月という結果になりました。なお、このデータはdeeptierのAI見積もりツールが機能単位で算出したものであり、実際の発注時には要件定義の精度や仕様変更によって変動します。

項目

最小

最大

総開発費用(税抜)

4,947万円

6,596万円

開発期間

9.3ヶ月

12.4ヶ月

体制

PM/PL 1名、フロント2名、バックエンド2.5名、クラウド1名

同左

開発費用を大きな区分でまとめると以下のとおりです。費用の大部分を占めるのは「アプリ画面開発」と「管理業務」で、合計で全体の約44%を占めます。「RAGのコア機能」よりも、それを支える基盤のほうがコスト比率として大きい点が特徴です。

費用区分

最小費用

最大費用

機能開発(RAGチャット・ナレッジ管理・権限・履歴等)

1,467万円

1,956万円

 うち: RAGチャット機能(3ロール分、難易度:高)

354万円

474万円

 うち: ナレッジ登録・編集(3ロール分、難易度:高/中)

651万円

870万円

 うち: 権限管理・履歴・定型クエリ・LLM切替等

462万円

612万円

アプリ画面開発(UI設計・フロント実装)

1,316万円

1,755万円

クラウド構築・非機能要件(AWS環境・セキュリティ等)

540万円

720万円

外部DBインテグレーション(SQL Server/Oracle/Access)

135万円

180万円

テスト整備(バックエンド自動テスト)

171万円

228万円

管理業務(PM・QA・ドキュメント・リリース管理等)

824万円

1,099万円

ログイン(3ロール分)

237万円

315万円

合計(税抜)

4,947万円

6,596万円

 

 

この事例の費用が一般的なRAGチャットの相場を大きく上回る理由

この事例の費用が一般的なRAG相場を大きく上回る理由は、以下の4点に集約されます。それぞれ「要件を変えれば削減できる」判断軸とセットで解説します。

① 3ロール構成によるコストの乗数効果
RAGチャット・ナレッジ登録・ナレッジ編集がそれぞれ「社員・役職者・管理者」の3ロール分として実装されるため、機能数が実質3倍になります。RAGコア機能だけで約354〜474万円、ナレッジ登録だけで約354〜474万円が発生しています。
【削減の判断軸】ロールを2種類(一般ユーザー・管理者)に集約するだけで、この2項目で数百万円の削減が可能です。

② 3種類の既存DBへの接続
SQL Server・Oracle・Accessという異なるDBへの接続は、それぞれドライバ管理や環境依存の問題が生じやすく、1種類の接続とは工数が大きく異なります。特にOracle・AccessはSQL Serverに比べて実装複雑度が高くなる傾向があります。
【削減の判断軸】接続をSQL Serverのみに絞るか、フェーズ2以降に分けることで初期費用を大幅に抑えられます。

③ 複数ファイル形式の解析処理
Office系・PDF・画像(マルチモーダル)の3形式への対応は、それぞれ異なる解析ライブラリと処理フローが必要です。特に画像のマルチモーダル抽出は実装工数が大きくなりがちです。
【削減の判断軸】フェーズ1ではPDFとOffice系のみに限定し、画像対応を後回しにすることで工数を削減できます。

④ LLMプロバイダの切替設計
「OpenAI APIと自社ローカルLLMを将来切り替えられるように」という要件は、抽象化レイヤーの設計が必要なため追加工数が発生します。「まずクラウドのみ」という割り切りで初期費用を抑えることも選択肢です。

 

SaaSツールとスクラッチ開発の選択基準

Microsoft CopilotやSlack、Notion AIなど、既存SaaSにRAG機能が搭載されるケースも増えています。この事例のような要件がない場合は、SaaSのほうが圧倒的にコスト効率が高い可能性があります。

スクラッチ開発が有利なケース

SaaSツールが有利なケース

社内の既存DB(Oracle・Access等)と接続が必要

既存DBとの連携は不要

部署・役職ごとに細かいアクセス制御が必要

全社員が同じ情報にアクセスできる構成でよい

LLMを社内サーバーで自己ホストしたい(情報漏洩リスク対策)

クラウドLLMの利用に制約がない

独自の登録・更新フローを業務に組み込みたい

汎用的な管理機能で十分

長期的に機能追加・カスタマイズを続けていく想定

まず試験導入してから判断したい

「まずPoC(小規模検証)としてSaaSで試し、本格導入でスクラッチ開発を検討する」という段階的なアプローチが、リスクを抑えながら要件を明確化できる現実的な進め方です。

 

まとめ:エンタープライズ向けの複雑な機能ゆえの見積もり金額

今回の事例では、権限管理や、複数のDBとの接続など、エンタープライズ向けの複雑な要件が重なったことで、一般的なRAGチャットシステムの相場と比較すると、非常に高額な見積もり金額となりました。

  • 初期開発費用: 4,947〜6,596万円(税抜)——既存DB3種類連携・3ロール・ローカルLLMへの拡張ありが前提

  • 開発期間: 9.3〜12.4ヶ月

  • 体制: 6〜7名規模(PM/PL・フロント2名・バックエンド2.5名・クラウド1名)

  • 費用削減の鍵: ロール数・DB接続数・ファイル形式の絞り込みで数百万〜1,000万円単位の削減が可能

この事例の費用レンジは「エンタープライズ向けの複雑な要件が重なったケース」です。自社の要件がシンプルであれば費用は大幅に下がります。逆に同様の要件がある場合は、この数字が現実的な発注規模感の参考になります。

 

自社の要件で費用を確認したい方へ

deeptierでは、AIを活用した無料の開発費用見積もりツール「AI見積もり」を提供しています。相談内容を自然文で入力するだけで、費用内訳と開発期間の目安を確認できます。

https://deeptier.co.jp/ja/ai-mitsumori

無料かつ自然文で相談できますのでお気軽にお試しください。


※本記事の見積もりデータは2026年7月時点でのAI見積もりツールによる算出値です。実際の開発費用は要件定義の内容・仕様変更・ベンダー選定等により変動します。


記事/構成:deeptier マーケティングチーム

 

■関連記事
なぜdeeptierはAI×人間のハイブリッド開発に行き着いたのか——独自の開発手法「Human-AI Hybrid Development Method」の裏側にある思想